疲れているのは、気持ちが弱いからではありません。小学生のころと同じ量の荷物を、親がまだ背負っているからです。手を動かす量は変わらないのに、返ってくる反応だけが変わります。ここが疲れの出所です。
先に結論をお伝えします。今日やることは1つだけです。親が代わりにやっている作業の中から、下ろす荷物を1つ選びます。
中学生の男子の子育てに疲れたら、下ろす荷物を1つ決める
やることは1つです。親が代わりにやっている作業を書き出し、いちばん軽いものを1つ、今週だけ手放します。
気持ちの持ち方を変える話ではありません。実際に手を動かしている作業を減らします。疲れは気力ではなく、作業の量から来るからです。
下の表は、中学生の家庭で親の側に残りやすい作業です。真ん中の列は、下ろしたときに起きることです。先に知っておくと、途中で拾い直さずにすみます。
| 親が代わりにやっている作業 | 下ろすと起きること | 渡すときの一言 |
|---|---|---|
| 朝、何度も起こす | 起きられない日が出る。遅刻は本人の遅刻になる | 「明日から1回だけ起こすね」 |
| 部活のバッグや制服を片づける | 廊下に置かれたままの日が続く | 「置き場所はここ。動かさないでおくね」 |
| 提出物の期限を覚えておく | 出し忘れが本人に返る | 「期限はカレンダーに書いておくね」 |
| 風呂や就寝の時刻を促す | 寝るのが遅くなる日が出る | 「声はかけないよ。起きる時刻だけ決めよう」 |
| 翌朝の持ち物を確認する | 忘れ物が増える | 「かばんは本人が見てね」 |
| 食事・睡眠・体調・安全 | 下ろさない (親の仕事のまま) | — |
渡す作業は、いちばん軽いものから選びます。重いものから手放すと、親のほうが不安で拾い直します。
下ろすのは作業だけ。関心は下ろさない
作業を手放すことと、関心を引き上げることは別です。黙って見張るのをやめるだけにしてください。聞かれたら答える位置には、座っていてかまいません。
食事・睡眠・体調・安全は、最後まで親の仕事です。ここは下ろしません。
子育てに自信がなくなるのは、物差しが子どもの反応になっているとき
自信がなくなるのは、親としての力が落ちたからではありません。評価の物差しが、子どもの反応ひとつになっているからです。
中学生になると、反応は薄くなります。「別に」「わかってる」で会話が終わります。その薄い反応を毎日の採点表のように読むと、点はほぼ毎日下がります。
物差しを変えてください。見るのは子どもの表情ではなく、今週下ろせた荷物の数です。これなら自分で数えられます。
今日やってみること
今夜、自分が代わりにやっている作業を3つだけ紙に書いてください。そのうち、下ろしてもけがや病気につながらないものに丸をつけます。
中学生の男子の子育てで、親が疲れる場面
疲れが出る場面は、だいたい決まっています。朝起きない。話しかけても「別に」。ゲームと動画。強い言葉。この4つです。
場面ごとに、親が背負っている荷物は違います。荷物に名前がつくと、下ろす順番が決まります。
朝起きない場面で親が背負っているのは、「遅刻させない責任」です。遅れて教室に入り、気まずい思いをするのは本人です。起こす回数をあらかじめ決めると、結果が本人に戻ります。朝起きられない日が続くなら、中学生の昼夜逆転の治し方で、夜を責めずに朝から直す手順をまとめています。
話しかけても返事がない場面で背負っているのは、「関係が切れていないかを確かめる役」です。確かめる声かけは、回数が増えるほど確かめにくくなります。待つ線と引かない線の分け方は、中学生の反抗期をほっとくべきかどうかで整理しています。
ゲームと動画の場面で背負っているのは、「時間の管理人」です。管理人を続けるかぎり、やめる判断は親の仕事になります。上限の決め方は、中学生のスマホは1日何時間までにするかでまとめています。
強い言葉が出る場面で背負っているのは、「言わせないための緊張」です。ここは作業ではないので、下ろし方が違います。物に当たる、家を出ていくなどが重なるときは、反抗期が激しい子への事前の決め方を先に読んでください。
息子のほうが先に距離を取るのは、珍しいことではない
母親との距離が急に開いたように見えるのは、よくあることです。青年期の親子関係を調べた研究は、こう書いています。「これらの研究からは,青年期後期において,男性は,親との距離を置くような形での独立的関係が女性と比較して顕著であり,女性は,親により依存的であることがわかる」(水本, 2018, 教育心理学研究)。
これは中学生より上の年代を見た記述です。それでも、息子のほうが距離を置く形になりやすい傾向は読み取れます。距離が開いたこと自体は、関係の失敗ではありません。
母親を避ける素振りが続くときの接し方は、中学生の反抗期で男子が母親と距離を取るときでまとめています。勉強に手を出すかどうかで迷っているなら、中学生が勉強しないときに放っておいてよい範囲が線引きの目安になります。
今日やってみること
明日の朝、起こす回数を先に決めてください。今夜のうちに「明日から1回だけ起こすね」と本人に伝えておきます。
疲れの種類を見分ける。種類によって下ろす荷物が違う
同じ「疲れた」でも、中身は3つに分かれます。手を動かす疲れ、見通しが立たない疲れ、ひとりで判断している疲れです。どれが大きいかで、下ろす荷物が変わります。
| 疲れの種類 | 口から出やすい言葉 | 下ろす荷物 |
|---|---|---|
| 手を動かす疲れ | 「毎日同じことを言っている」 | 作業を1つ本人に返す |
| 見通しが立たない疲れ | 「この先どうなるのか分からない」 | 今夜決める話と、数年かけて動く話を分ける |
| ひとりで判断している疲れ | 「誰にも相談できていない」 | 判断を自分だけで抱えない。外に窓口を1つ置く |
見落とされやすいのは2つめです。手は足りているのに、終わりが見えないと重く感じます。
いつまで続くのかが見えないとき
いちばんしんどい時期は、学年では決まりません。負荷が増えやすい時期の目安はありますが、出方は子どもによって違います。
目安になるのは2つの時期です。1つは中学1年の環境の変わり目です。もう1つは、進路の話が増える中学3年の時期です。学校の決まり、部活、定期テストが一度に増えると、家での反応は鈍くなります。
入学後の変わり目に家で何を先回りしてよいかは、中1ギャップとは何かと、家での線引きでまとめています。終わり方の見通しについては、反抗期はいつからいつまで続くのかのページで、年齢ではなく中身の変化で見る方法を整理しています。
夫婦やきょうだいの温度差で増える疲れ
温度差は、埋めなくてかまいません。そろえるのは「やめること」を1つだけです。
たとえば「テストの点数には、ふたりとも触れない」と決めます。方針を全部そろえるより、対象を1つに絞るほうが合意しやすくなります。
きょうだいがいる家庭では、比較の言葉が疲れを増やします。姉や妹と出方が違うのは自然なことです。娘の側の出方と立て直しは、娘の反抗期が耐えられないときの立て直しでまとめています。
今日やってみること
今週、夕食の片づけを1日だけ本人に渡してください。その時間は、座ってお茶を飲むだけにします。
下ろしても家の空気が変わらないとき
ここまでの手順は、多くの家庭で効く標準的な下ろし方です。ただ、同じように下ろしても、変化が見えないことがあります。
理由は2つあります。1つは、同じ関わり方でも、子どもによって届き方が違うことです。もう1つは、今がどんな時期かということです。
親の疲れた表情や沈黙を、自分のせいだと受け取る子がいます。食卓で親が黙り込んだ夜に、心配をかけないよう先に部屋へ戻ります。この子には、疲れの出所を言葉にしてください。「今日は仕事で疲れている。あなたのことで怒っているのではない」。出所がはっきりすると、距離を取らずにいられます。
一方で、先回りを「できていないと見られた」と受け取る子もいます。朝の支度や部活の持ち物を親が整えるほど、取りかかる気配が消えます。この子に渡すときは、手順を紙1枚にして一度だけ渡します。そのうえで「これはもう確認しないね」と先に言ってください。確認が残ると、渡したことになりません。どこまでが本人の分かの線引きは、過干渉かどうかのセルフチェックで「誰が決めたか」から仕分けています。
時期の影響もあります。人には、外に向かって動きやすい時期と、内側で力を蓄える時期があります。蓄える時期に背中を押すと、反発か無気力が返ってきやすくなります。
このページの要点
疲れの正体は、下ろしていない作業の量です。今週下ろすのは1つで足ります。
そのうえで、同じ下ろし方が届く子と届きにくい子がいます。必要なのは言い方の工夫ではなく、気質と時期の見立てです。
気質と時期をどう組み合わせて判断するかは、中学生の子育てでイライラが止まらない親の境界線のページで体系的にまとめています。
親の限界が近いときは、ひとりで抱えない
気力の余白が尽きているときは、関わり方を直す前に負荷を下げてください。順番を逆にすると、どの方法も続きません。
こども家庭庁の資料は、こう書いています。「また、子育てには、気力・体力をとても使います。そのため、困ってから相談に行こうと思っても、その気力が湧かなくなってしまうこともあります」。
動けるうちに相談しておくほうが楽だということです。同じ資料は「時には保護者自身が休むことも、大切です」とも書いています。休むことは、手を抜くことではありません。
相談の目安も、自分の感覚だけで決めなくてよいです。厚生労働省のサイト「こころもメンテしよう」は、気分の落ち込みが続くときに見る項目を挙げています。悲しい気分が続く、好きだったことに興味がわかない、眠れない、疲れやすいなどの項目です。
同サイトは、こう説明しています。「次のうち5つ以上(1か2を含む)が2週間以上続いていたら、専門家に相談することをお勧めします」。当てはまることが、何かの病気を意味するわけではありません。自分で判断せず、下の窓口に話してください。
| 相談先 | どんなときに |
|---|---|
| お住まいの市区町村の子育て相談窓口・保健センター | 子育ての悩み全般。使える支援の案内も受けられる |
| 親子のための相談LINE(こども家庭庁) | 匿名で相談したいとき。こども(18歳未満)と保護者などが対象 |
| 学校の担任・スクールカウンセラー | 学校生活や友人関係が関わっているとき |
| 心療内科・精神科などの医療機関 | 眠れない、食べられないが続くとき |
こども家庭庁の案内では、親子のための相談LINEは「子育てや親子関係について悩んだときに、こども(18歳未満)とその保護者の方などが相談できる窓口です」とされています。親の側から相談してよい窓口です。
スクールカウンセラーも、子ども専用の窓口ではありません。文部科学省の説明では、「児童生徒へのカウンセリング,教職員及び保護者に対する助言・援助において効果を上げています」とされています。
こども家庭庁の資料は、こうも呼びかけています。「子育ての大変さを保護者だけで抱えるのではなく、少しでも困ったことがあれば、まずは、お住まいの市区町村の子育て相談窓口や保健センター等にご連絡下さい」。
子どもの側にも、学校へ行き渋る、眠れない、食欲が落ちるといった変化が続くことがあります。そのときは、生活態度の問題として扱わないでください。担任やスクールカウンセラー、自治体の教育相談窓口、医療機関に早めに相談してください。
今日やってみること
今週のうちに、家族以外の1人に「最近疲れている」と一言だけ伝えてください。解決策をもらわなくてかまいません。
よくある質問
中学生の子育てで大変な時期はいつですか
学年では決まりません。目安になるのは、環境が変わる中学1年と、進路の話が増える中学3年です。ただし、負荷の出方は子どもによって違います。疲れのピークは、学年よりも「親が背負っている作業の量」で決まります。作業が減らないまま年数が過ぎると、学年が上がっても軽くなりません。
中学生の子育てをやめたいと思ってしまいます
その考えが浮かぶのは、限界が近いという合図です。親をやめる必要はありません。下ろすのは役割ではなく、作業です。まずは作業を1つ手放し、家族以外に話す相手を1人作ってください。眠れない、食べられないが続くときは、市区町村の相談窓口や医療機関に連絡してください。
反抗期の応酬が続いて「母親をやめたい」とまで思うときは、反抗期で母親をやめたいときに、降りる役を1つ選ぶ方法も読んでみてください。
中学生からでも子育てはやり直せますか
やり直しという言い方は要りません。関わり方は、中学生からでも変えられます。小さい子に合っていた先回りを減らし、決定と結末を本人に返していく作業です。これまでの関わりが間違っていたという話ではありません。相手の年齢に合わせて、担当を入れ替えるだけです。
思春期の子どもはどうして疲れているように見えるのですか
部活、勉強、人間関係が同時に増える時期だからです。体も大きく変わるため、睡眠が足りない日が続きます。家でぐったりしているのは、外で力を使った結果でもあります。ただし、朝起きられない日や食欲の落ちた日が続くときは、様子見を続けないでください。学校やかかりつけの医療機関に相談してください。











