夜9時すぎ。小学5年生の下の子は、宿題のプリントを広げたまま動画を見ています。中学2年生の上の子の部屋からは、スマホの通知音だけが規則的に漏れてきます。「そろそろやったら」と一度だけのつもりで声をかけ、気づけば3回目。返ってくるのは「今やろうと思ってたのに」。取り上げれば怒鳴り合いになり、黙っていれば日付が変わります。

先に結論をお伝えします。勉強に向かわない、スマホを手放せないという状態は、性格の怠けではなく、行動が止まる条件がそろったときに起きる現象です。だから最初に変えるのは、声のかけ方ではありません。家庭のなかにある条件のほうです。

条件は大きく2つあります。ひとつは、どこまでが親の仕事で、どこからが本人の仕事かという線が混ざっていること。もうひとつは、行動の結果が本人に返る前に、親のほうが先に困ってしまっていることです。

このページでは、5つの領域ごとに、その線をどこに引くのかを具体的に示します。勉強・スマホ・宿題・生活リズム・持ち物の5つです。そのうえで、罰とご褒美がどこまで効くのかを見ます。最後に、同じ環境の整え方が、子どもによって違う届き方をする理由を見ていきます。

怠けではなく「行動が止まる仕組み」

止まっているのは意志ではなく、行動の入口

プリントを広げたのに、鉛筆が動かない。そんな姿を見ると、「やる気がない」と言いたくなります。ただ、この説明は便利ですが、何も変えられません。実際に起きているのは、行動を始める入口に障害物が置かれている状態です。

こども家庭庁は「体罰等によらない子育てのために」というとりまとめを掲載しています。そこでは、子どもの困った行動について『子どもが困った行動をする場合、子ども自身も困っていることがあります』と述べています。困った行動の裏で、本人も困っていることがある、という見方です。

同じ資料は片づけをしない例を挙げ、「何をどこに置いたらよいかが分かると、自分で片付けがしやすくなるかもしれません」と続けています。やり方が見えれば、自分で動きやすくなるということです。幼い子を例にした記述ですが、小学校高学年から中学生の行動を読み解くときにも同じ見方が使えます。

勉強で言えば、入口の障害物はたとえば次のようなものです。

  • どこから手をつければよいかが、本人のなかで決まっていない
  • 始めたら、終わりが見えない
  • 手を伸ばした先に、スマホがある
  • うまくできない姿を、家族に見られたくない

どれも、意志の強さとは別の話です。

ネット利用が長くなりやすいのは、終わりのない作りのものが手元にあるから

こども家庭庁は、令和7年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」を公表しています。平日にインターネットを『3 時間以上』使っている青少年の割合は、小学生で61.7%、中学生で78.1%、高校生で86.0%と報告されています。学年が上がるほど、長く使う子の割合が高くなっています。

平均時間は、小学生が233.6分、中学生が324.3分、高校生が404.0分です。これはスマホだけの数字ではありません。スマホ・ゲーム機・学校配布の端末・テレビなどを合計した利用時間です。

中学生の平均は、1日あたり5時間を超えます。この数字は、「うちの子だけが特別に意志が弱い」という前提を崩してくれます。動画も通話もゲームも、終わりを自分で決めないと終わらない作りです。それが、手のひらの上に常にあります。そこから自力で離れるのは、大人にとっても簡単ではありません。

3つ目の障害物は、親からの圧力

冒頭の場面を思い出してください。「そろそろやったら」は、言葉としては穏やかです。それでも3回目になると、子どもからは「今やろうと思ってたのに」が返ってきます。

入口の障害物には、家庭のなかでつくられるものもあります。小学校高学年から中学生にかけて、子どもは親を一人の人間として外側から眺めるようになっていきます。「何を言われたか」だけでなく、「どういうつもりで言われたか」まで読み取る子が増えてくる時期です。

親が不安を抱えたまま声をかけると、言葉が穏やかでも、子どもには「動かそうとする力」として届きます。力を感じた側が取れる行動は、押し返すか、固まるかのどちらかです。反発も無気力も、怠けではありません。自分の領域を守るための反応だと捉えたほうが、実態に近くなります。

入口に障害物がある
(始め方が決まっていない)
動かない時間が続く
親が先に困り、圧力が増える
領域を守る反応が起きる
さらに動けなくなる
行動が止まる仕組み。最後の1つは家庭のなかでつくられるため、親の側から変えられる

今日やってみること

今夜、「そろそろやったら」のような促す声かけを何回したか、紙に正の字で数えてみてください。回数を減らそうとしなくてかまいません。まずは数えるだけです。

領域ごとの距離の取り方

「勉強しない」を1つの問題として扱わない

勉強、スマホ、宿題、起床時刻、忘れ物。これらはまとめて「だらしなさ」として語られがちです。けれども、親が手を出してよい度合いはそれぞれ違います。全部に同じ強さで介入するから、本来手を出さなくてよい領域まで戦場になります。

判断の基準はシンプルです。失敗しても本人が回復できることは、本人の仕事です。失敗すると回復に他者の助けが要ること、安全や健康に関わることは、親の仕事として残します。

領域親が手放さない仕事本人に返す仕事線を引く理由
勉強教材や机など環境を用意する。テストや受験の日程を共有する何をいつどの順でやるか。時間の長さ。結果の受け止め方やり方を指示されるほど、自分に合う方法を試す機会が減る
スマホ・ゲーム課金と個人情報、通信先の安全。深夜帯に端末が寝室にあるかどうか1日のなかでの使い方の配分。友人とのやり取りの内容安全と金銭は回復に他者の手が要る。配分は失敗しても取り返せる
宿題・提出物締切の情報を本人と共有する(先回りして仕上げない)やるかどうかの判断と、出さなかったときの説明未提出は学校のなかで完結する失敗で、本人が修正できる
生活リズム起床・就寝・食事の家庭側の枠を保つ。不調のサインを見る何時に寝るかの最終的な決定と、翌朝の眠さの引き受け健康に直結する土台は親の側に残し、時間配分は本人に返す
持ち物・忘れ物用意する物のリストが手に入る状態にしておく前日に確認して詰めること。忘れたときの対応忘れ物は小さく安全な失敗で、繰り返す価値がある練習になる

手放すときは一気に変えない

いきなり全領域から手を引くと、親のほうが不安に耐えられなくなります。そして数日で元に戻ります。戻ったときに子どもが受け取るのは、「結局いつもと同じ」という感覚だけです。影響の小さい領域から順に進めるほうが現実的です。

線を引き直す手順

  1. 今週ぶつかった場面を書き出し、上の表のどの領域かを分ける
  2. 「持ち物・忘れ物」から手を引く。確認をやめ、リストの置き場所だけ伝える
  3. 2週間たったら「宿題・提出物」に進む。締切の共有は続け、仕上がりの点検をやめる
  4. 「勉強」の中身と時間に口を出すのをやめる。日程の共有だけを残す
  5. 「スマホ」と「生活リズム」は最後。安全と健康に関わる部分だけ親の側に残す

領域を混ぜて話さない

「宿題もやらないでスマホばかり見て、だから朝も起きられない」。この言い方は、3つの領域を1つの人格評価にまとめてしまいます。

子どもの側には、「自分そのものを否定された」としか残りません。どこを直せばよいかの情報も伝わりません。話すときは、1回につき1領域までにとどめます。

今日やってみること

今夜、今週ぶつかった場面を1つ思い出して紙に書き、その横に上の表の領域名を書いてみてください。手順の1番目にあたる作業の、小さな版です。手を引くのは、そのあとで決めればかまいません。

生活リズムだけは扱いを変える

5つの領域のうち、生活リズムだけは「本人に返す」の度合いを慎重にしてください。次のようなサインが続くときです。

  • 昼夜が逆転している
  • 朝起きられない日が続く
  • 食欲がない
  • 学校に行き渋る様子がある

こうしたサインは、時間の使い方の問題ではないことがあります。心身の不調や、環境の負荷の表れであることがあるからです。

この場合は、家庭内の線引きの話として扱わないでください。担任の先生やスクールカウンセラー、お住まいの自治体の教育相談窓口に、早めに相談してください。必要に応じて、医療機関にも相談します。文部科学省は、子ども本人が相談できる窓口と、保護者が相談できる窓口の両方を案内しています。

今日やってみること

今日のうちに、お住まいの自治体の教育相談窓口の連絡先を調べて、スマホのメモに残しておいてください。使うかどうかは、そのあとで決めてかまいません。

罰とご褒美の限界

ルールがある家庭でも、利用時間は長い

「うちはルールを決めていない親が悪いのでは」と考える方もいます。先ほどの調査では、家庭のルールの有無ごとに利用時間を比べています。ルールがあると答えた青少年の平日の平均利用時間は299.8分でした。ルールがないと答えた青少年は386.1分でした。ルールありと答えた青少年のほうが、平均時間は短い傾向です。

ただし、これは小中高を合算した数字です。「ルールを決めている」と答えた割合は、小学生83.8%、中学生74.5%、高校生44.3%と、学校種で差があります。平均利用時間のほうも、小学生233.6分、中学生324.3分、高校生404.0分と開いています。学校種の違いが混ざっているため、ルールの効果だけを示す数字ではありません。

そのうえでこの数字が示すのは、ルールがあると答えた青少年でも、平日の平均は1日5時間近いという現実です。ルールを決めること自体が無駄なわけではありません。ただ、ルールだけで行動が入れ替わるわけでもありません。

「決めたルール」と「合意されたルール」は違う

親が「スマホは9時までって決めたよね」と言うと、子どもは「そんなの決めてない」と返す。台詞は一例ですが、こうしたやりとりに思い当たる方もいるかもしれません。

同じ調査で興味深いのは、同じ質問を青少年本人と保護者の両方にしている点です。「ルールを決めている」と答えた割合は、中学生本人では74.5%でした。中学生の保護者では81.9%で、差は7.4ポイントありました。高校生では、差は14.0ポイントまで開きます。

青少年と保護者はそれぞれ別に回答しており、同じ家庭どうしを照合した数字ではありません。それでも、親の側と子の側で「ルールがある」と答える割合には差があります。親と本人のあいだで、ルールの認識がずれている家庭が含まれている可能性があります。

守られないルールを見つけたら、罰を強める前に確かめてみてください。「これは本人の口から説明できる内容か」。それだけで、話が変わることがあります。

今日やってみること

今夜、家のスマホのルールを一つ選び、子どもに「このルール、どういう内容だったっけ」と聞いてみてください。答えが親の覚えている内容と違っても、その場では直さずに聞いておきます。

罰が変えるのは行動であって、判断力ではない

スマホを取り上げる、ゲーム機を隠す、小遣いを減らす。これらは、その場では効きます。効くからこそ繰り返し使われ、効き目が薄れるたびに強くしていくことになります。

先に挙げたこども家庭庁掲載のとりまとめは、体罰等 (叩く・怒鳴る) について次のように述べています。『叩かれたり怒鳴られたりすると、大人への恐怖心等から一時的に言うことを聞くかもしれませんが、これは、どうしたらよいのかを自分で考えたり、学んでいるわけではありません』。怖くて従っているあいだは、自分で考えて学んでいるわけではない、という指摘です。

「その場の行動が変わったこと」と、「自分で考える力がついたこと」は別のものです。この2つを区別する視点は、取り上げや叱責を考えるときにも使えます。

ご褒美も、行動の理由を外側に置く

「テストで何点取ったら買う」で動いた子が、買ってもらったあとの学期には動かなくなる。そうなりやすい家庭もあります。意地悪ではありません。行動の理由が外側にあったときに、起きやすい流れです。

ご褒美は罰の反対に見えますが、構造は同じです。どちらも、行動する理由を本人の外側に置きます。外側に理由を置くと、その理由がなくなった場面では行動が止まりやすくなります。

罰もご褒美も、緊急時に使う道具としては否定しません。締切が迫っている、安全に関わる、といった場面では有効です。ただし、常用すると親子の関係が取引に近づきます。取引の条件は、回を重ねるごとに上がりやすくなります。

罰とご褒美の使いどころ

短期的に行動を止めたい場面、安全に関わる場面では使ってかまいません。長期的に「自分で決めて動く」を育てたい場面では、判断の材料と決定権を本人に渡すほうが早道です。両者を混ぜると、どちらの効果も見えにくくなりやすくなります。

あえて失敗させる技術

失敗は、親が用意できる数少ない教材

文部科学省の「生徒指導提要」は、子どもが自ら考え選択し決定する体験の重要性を述べています。『児童生徒が、授業場面で自らの意見を述べたり、観察・実験・調べ学習等において自己の仮説を検証しレポートにまとめたりすることを通して、自ら考え、選択し、決定する力が育ちます』。自分の考えを試してまとめる経験から、自分で決める力が育つということです。学校の授業を想定した記述ですが、家庭にも同じ構造があります。

仮説を立て、試し、結果を見て修正する。この一連の流れが「決める力」を育てます。そして家庭でこの流れが最も自然に起きるのが、小さな失敗の場面です。

  • 忘れ物をして困る
  • 宿題を出さずに指摘される
  • 夜更かしをして、翌朝つらい思いをする

どれも、本人が結果を引き受けられる範囲の失敗です。

本人が決める
小さく失敗する
本人が困る
本人が方法を変える
自分のやり方になる
失敗を教材に変えるサイクル。親が2番目と3番目を肩代わりすると、4番目が起きない

渡してよい失敗と、渡してはいけない失敗

ここが、この技術のいちばん大事な部分です。「失敗させればよい」という話ではありません。線は明確に引きます。

渡してよい失敗渡してはいけない失敗
忘れ物をして、その日の授業で困る心身の不調のサインを見逃すこと
宿題を出さず、先生から指摘される金銭の被害や個人情報の流出が起きること
夜更かしして、翌朝眠いまま登校する睡眠不足が数週間続き、生活が崩れること
準備不足のまま定期テストを受ける学校との関係が切れ、居場所がなくなること
自分で選んだ教材が合わずやり直す他者を傷つける、法に触れる行為

右側は、本人の力では回復できない領域です。ここは線を引いたまま親が持ちます。左側は、痛みは小さく、回復は本人の手の届く範囲にあります。

失敗のあとに親がやること、やらないこと

失敗させる技術の成否は、失敗の直後の数分で決まります。同じ忘れ物のあとでも、親の一言で子どもに残るものが変わります。

失敗の直後に親が言う言葉 (例)子どもに残りやすいこと
「ほら言ったでしょう」失敗が、親の正しさを証明する材料になる。次から失敗を隠すようになる
「体操服、忘れちゃったんだね。次はどうする?」(困っている状態を横で認めてから、本人に聞く)答えが出なくても、考える時間が本人に渡る

「ほら言ったでしょう」と言った瞬間、その失敗は本人の学習材料ではなくなります。子どもは学ぶ代わりに、次から失敗を隠すほうを学びます。

やることは2つだけです。困っている状態を横で認めること。そして「次はどうする」を本人に聞くこと。答えが出なくてもかまいません。考える時間が渡ったこと自体に意味があります。

「失敗させるため」に手を引かない

手を引く目的は、本人に決定権を返すことです。「痛い目を見ればわかる」という気持ちで手を引くと、その意図は子どもにそのまま伝わります。伝わった時点で、失敗は教材ではなく罰になります。

手を引くときは、期待も予告もせず、静かに引くのが結果的に早道です。

今日やってみること

今夜、「次はどうする?」と小さな紙に書いて、冷蔵庫など自分の目に入る場所に貼ってみてください。「ほら言ったでしょう」が出そうな場面で、代わりに思い出すための目印です。

気質に合わせた環境設計

環境を変えるレバーは3つ

同じ「充電器を居間に置く」でも、親が決めて置いたのか、本人が決めて置いたのかで、その後の展開はまったく変わります。ここまでの線引きを実際に動かすのは、言葉ではなく環境です。環境設計で触れるレバーは、大きく3つあります。

  • 物の配置: スマホの充電場所を寝室の外にする、教材を机の上に開いたままにしておく、といった物理的な操作
  • 時間の区切り: 終わりの見えない活動に、終点をつくること
  • 決定の主語: その配置や区切りを、「誰が決めたことにするか」

3つ目が抜けると、最初の2つは取り上げと同じ意味になります。最初に挙げた充電器の例で、展開を分けていたのはこの3つ目です。

今日やってみること

今週のどこかで、子どもに「充電器、夜はどこに置くのがいいと思う?」と一度だけ聞いてみてください。その場で決まらなくてもかまいません。決めるのは本人だと伝わることが、最初の一歩です。

同じ環境設計が、子どもによって逆に働くことがある

ここが、対処法の記事どおりにやっても結果が違ってくる理由です。同じ環境設計でも、生まれ持った受け取り方の傾向によって届き方が変わります。

こんな様子の子こうすると逆効果になりやすいこうすると届きやすい
準備が整うまで取りかかれない。着手が遅く見えるが、始めれば一つずつ進める机に向かうまでの遅さを指摘し、やるべき課題をまとめて並べて見せる取りかかる前の準備そのものを工程として時間に入れ、机の上に出す教材を1つに絞る
枠が細かいほど手が止まり、任される範囲が広いほど動く時間・場所・順番まで決めた運用ルールを作り、守れたかを毎日点検する安全に関わる枠だけを1つ残し、その内側の使い方と時間配分は問わない

上の表は「そうなりやすい傾向」を並べたものです。同じ傾向の子が全員このとおりに動くという話ではありません。挙げたのは一部の例で、どれが良い悪いという話でもありません。

問題は、親が「自分に合った環境」を、そのまま子どもの環境設計に持ち込んでしまうことです。枠が少ないほど調子が出てきた人は、枠を外そうとします。手順が決まっているほど安心できた人は、手順を増やそうとします。どちらも自分には効いた設計で、目の前の子に効くかどうかは別の話です。

こども家庭庁掲載のとりまとめも、子どもに伝えるときには『どうすればよいのかを言葉や見本を示す等の本人が理解できる方法で伝える必要があります』としています。言葉で伝えるか、見本を見せるかも含めて、その子にわかる形で伝えるということです。「本人が理解できる方法」は、子どもによって違います。

今日やってみること

今夜、自分が中学生のころ、枠が多いほうが動けたか、少ないほうが動けたかを、メモに一行書いてみてください。自分の型がわかると、それを子どもにそのまま当てはめていないかに気づきやすくなります。

環境が整っても動かない時期がある

もうひとつ、環境設計が効かない理由があります。時期です。人には、外に向かって行動しやすい時期と、内側でエネルギーを蓄える時期があります。

環境を整えて背中を押しても、手ごたえがない時期が続くことがあります。そのときは、今は蓄える時期にあるのかもしれない、という見方を一度入れてみてください。この見方を持てると、親にできることが変わります。設計を強めて押し込むのではなく、次に動き出すときに向けて、力を溜められる状態を守っておくことです。

逆の場合もあります。動きやすい時期に入ってきたと見えるのに、以前の反発を恐れて何も渡さずにいる。そのうちに、渡せたはずの決定権を渡しそびれることもあります。

このページの要点

行動が止まるのは怠けではなく、入口の障害物と、混ざった線引きと、親からの圧力が重なった結果です。領域ごとに親の仕事と本人の仕事を分け、回復できる範囲の失敗は本人に返す。そのうえで、同じ環境設計の届き方は気質と時期によって変わります。

対処法を正しく実行しても、結果が分かれることがあります。それは方法の優劣ではなく、相手に対する見立てが入っていないからです。子どもが動かない背景には、「気質」と「タイミング」という2つのズレがあります。この2つについては、親子スイッチの考え方で体系的にまとめています。

よくある質問

スマホを取り上げてよいのは、どんなときですか

本人の力では回復できない事態が、起きているか、起きかけているときです。たとえば、金銭の被害、個人情報の流出、知らない相手とのやり取りです。この場合は取り上げではなく安全の確保として、理由を短く伝えて実行します。

一方、勉強しないことへの罰として取り上げると、行動の理由が「取り上げられないため」に置き換わります。そうなると、返した時点で元に戻りやすくなります。

手を引いたら成績が下がりました。元に戻すべきでしょうか

成績だけを理由に、すぐ元に戻さなくてかまいません。一時的に下がることはあります。判断の目安を、成績ではなく「本人が自分の状況を言葉にできるか」に変えてみてください。

点数が下がっても、どこができなかったかを本人が説明できるなら、修正の主語は本人に移っています。説明が出てこないときは、手を引く順番が早すぎた可能性があります。その場合は、日程の共有など情報面の支援だけを戻します。

朝起きられず、昼夜が逆転しています。これも本人に返すべきですか

生活リズムの乱れが数週間続く場合、時間の使い方の問題として扱わないでください。眠れない、食欲がない、学校に行き渋る、体調不良を訴える、といった様子があるときは、家庭内の線引きの話ではありません。

担任の先生やスクールカウンセラー、自治体の教育相談窓口、医療機関に、早めに相談することをおすすめします。発達の特性について気になる点があるときも同様です。

小学生と中学生で、線の引き方は変えるべきですか

引く場所は同じで、渡す速度を変えます。小学生のうちは、忘れ物や宿題など回復しやすい領域から少しずつ返し、情報面の支援を厚めに残します。

中学生になると、親の管理から離れて、自分のやり方を試したい力が強まります。そのため、勉強の中身に踏み込むほど抵抗が大きくなります。返す範囲を広げ、安全と健康に関わる部分だけを手元に残すのが現実的です。