反抗期がないこと、目立たないこと自体は、心配の材料ではありません。反抗期を経験しない青年は珍しくなく、反抗の出し方も子どもによって大きく違います。見ておきたいのは、反抗があるかどうかではありません。不満や希望を、どこかに出せているかどうかです。
出す場所は、家の中の言葉でなくてもかまいません。友だちや外の大人との関係、ひとりの時間、好きなことの中にあれば十分です。その子なりの離れ方をしていると考えてよいことが多いでしょう。このあと、見分け方と、親が整えられる条件を順にお伝えします。
反抗期がないのは大丈夫?目立たないこと自体は問題ではない
結論から言えば、反抗期がないことだけで心配する必要はありません。研究でも公的な相談の場でも、反抗期が目立たない子は珍しくないものとして扱われています。
青年期の親子関係を調べた須崎 (2023) は、先行研究を紹介しています。そこでは、3〜4割の青年が第二反抗期を経験していないという結果が報告されています。反抗があった場合でも、世間でイメージされるような激しいものとは限らない、とも述べています。
東京都の「こども・子育てお悩み相談室」のページでは、教育評論家の尾木直樹さん (法政大学名誉教授) が話しています。目立った反抗期がなくても、心と体の変化とともに思春期は来る。そして、いずれ自立して親離れしていく、という見方です。公的機関としての見解ではなく、専門家個人の見方です。ただ、研究の報告と同じ方向の説明になっています。
つまり「反抗期がない」は、「親離れが起きていない」と同じ意味ではありません。親とぶつからずに、少しずつ自分の考えを持つ子もいます。自分で決める範囲を、静かに広げていく子もいます。
反抗期がない子の特徴は「出し方」の違い
反抗期がない子に共通する性格、というものはありません。違うのは、不満や違和感の「出し方」と「出す場所」です。
須崎 (2023) は、強い反抗心を感じた時期がなかった大学生に、理由を尋ねています。答えは「反抗する意味がないと思った」「親に感謝していた」「自分の性格」「親との接触時間の長さ」など、さまざまでした。小規模な調査なので、人数の多い少ないは参考程度です。それでも、反抗しなかった理由が一つではないことはわかります。
反抗期が来ないとどうなる?
反抗期が来ないこと自体で、何かが起きると決まっているわけではありません。研究では、反抗期がなかった背景として、主に2つの場合が語られています。
須崎 (2023) は、江上・田中 (2013) の研究を紹介しています。その研究は、次の両方がありうると推測しています。
- 家族の中で自立がうまく進み、反抗を必要としなかった場合
- 親の期待に応えようと気持ちを抑え、「よい子」でいた場合
ただ、須崎 (2023) 自身の調査では、無理に「いい子」を演じて反抗期が平穏だったと考えられる人は少なかった、と述べています。
どちらの場合かを、親が外から言い当てることはできません。だから「心配かどうか」を考えるより、その子の不満や希望の出口がどこにあるかを見るほうが判断しやすくなります。次の節で、その見方を説明します。
今日やってみること
今夜、この1週間で子どもが「いや」「こっちがいい」と言った場面を、一つ思い出して、手帳かスマホのメモに書いておいてみてください。見つからなければ、見つからなかったことだけ書いておけば十分です。
反抗の出し方は子どもによって違う。言葉でぶつかる子・黙って距離を取る子・外で出す子
反抗は、言葉で言い返す形だけで出るものではありません。同じ年ごろの子でも、出し方は大きく分かれます。須崎 (2023) も、こう書いています。親との葛藤や反抗の気持ちを感じながら、「行動には移さない青年も存在する。」。気持ちはあっても、外からは見えない形で過ごす子がいる、ということです。
同じ「週末の予定を伝える」場面で、どう返ってくるかを、例として並べます。
| 週末の予定を伝えたときの返し方 | ふだんの家での様子 | 親が読み違えやすいこと |
|---|---|---|
| 「なんで勝手に決めるの」と言い返す | 口答えが増える | これだけを「反抗期」だと思う |
| 「別に」と短く答えて、自室に戻る | 自室にいる時間が長い。話しかけると短く答える | 何か隠している、心を閉ざしたと受け取る |
| 家では「いいよ」。友だちや部活の先輩とはよく話す | 家では穏やか。外の人とはよくしゃべる | 「うちは反抗期がない」と思う。外の相手を親の代わりとして警戒する |
| すぐに「いいよ」と合わせる | 家族の予定や決まりに合わせる。不満を口にしない | 素直で手がかからないと受け取る。本人の希望を聞く場面がなくなる |
下の3つは、家の中から見えにくいだけです。出す場所がないわけではありません。言い返す子・黙る子・外で出す子の違いと、届きやすい関わり方は、反抗期はいつからいつまで?の気質の節で表にまとめています。
この記事で特に取り上げたいのは、表の2行目と4行目です。ひとりの時間で整理する子と、「いいよ」と合わせる子です。どちらも家では静かなので、反抗期がないように見えます。ただ、出口の整え方が違います。
親に反抗できない中学生なのでは、と心配になったとき
「反抗しない」のか「反抗できない」のかは、小さな「いや」や「こうしたい」を言える場面があるかで見分けます。たとえば次のような場面です。
- 友だちの誘いを断れる
- 好きなものを自分で選べる
- 疲れたときに「今日は無理」と言える
親に言い返さなくても、こうした場面があれば出口はあります。
反対に、頼まれると断れない様子が、家でも学校でも続くことがあります。疲れていても「大丈夫」としか言わない。そんなときは、出口が狭くなっているかもしれません。その場合も、反抗させることが目標ではありません。希望を言っても大丈夫だと思える場面を、少しずつ増やすことが目標です。
今日やってみること
夕食のおかずや週末の行き先など、どちらでもよいことを一つ選んで、「AとBどっちがいい?」と二択で聞いてみてください。子どもが選んだら、そのとおりにします。理由は聞きません。
反抗期が目立たない子で、親が見ておくサイン
親が見ておくのは、反抗の量ではありません。生活の土台が保てているかどうかです。睡眠・食事・口数・学校の様子が大きく崩れずに続いていれば、心配はいりません。反抗が目立たないのは、その子なりの出し方だと考えてよいことが多いでしょう。
| 見るところ | 出せている子に多い様子 | 続いたら気にかけたい様子 |
|---|---|---|
| 睡眠 | 寝る時刻と起きる時刻が、大きく崩れずに続いている | 寝つけない、夜中まで起きている、朝起きられない日が続く |
| 食事 | 食べる量に波はあっても、大きく変わらない | 食べる量が大きく減った、または増えた状態が続く |
| 口数 | 家での口数は少なくても、好きなことの話は出る | 好きなことの話も出なくなり、表情が沈んだまま戻らない |
| 学校・友だち | 学校や部活に通え、友だちの名前が話に出る | 朝になると体調不良を訴える、休みがちになる、友だちの話がまったく出なくなる |
| 「いや」と言える場面 | 誘いを断る、好みを主張する場面がある | 何を聞かれても「いいよ」「大丈夫」しか返ってこない |
一つの項目が一時的に崩れることは、どの子にもあります。見るのは、ひと月前と比べて、右の列の様子が重なって続いていないかです。重なって続くときは、反抗期の有無とは別の問題です。記事の後半の相談先を使ってください。
今日やってみること
今夜、子どもが寝た時刻を手帳かスマホのメモに書いておいてみてください。1週間続けると、睡眠の様子が崩れていないかを、記憶ではなく記録で確かめられます。
親が気にしすぎなくてよいこと、してほしくないこと
反抗期がないことを心配して、反抗を引き出そうとする必要はありません。反抗期は、来させるものではありません。その子の出し方で過ぎていくものです。
逆効果になりやすい関わり方
「本当は不満があるんでしょう」と問い詰める。「反抗期がないのはおかしい」と本人の前で言う。きょうだいや同級生の反抗期と比べる。
どれも本人には、「今の自分ではいけない」という意味で届きやすい言葉です。かえって本音を出しにくくします。
そのうえで、出口が家の中から見えにくい子には、親が整えられる条件があります。ここでは2つの子に分けて、一つずつお伝えします。「いいよ」と合わせる子と、ひとりの時間の中で整理する子です。どちらも、子どもを変える方法ではありません。親子が、無駄な読み合いをしなくて済むための工夫です。
「いいよ」と合わせる子には、親のほうが先に小さな希望を口に出す
言われたことや決まりを、きちんと受け止めたい子がいます。この子は、家族の予定にも「いいよ」と合わせることが多くなります。不満がないわけではありません。家の中で希望を言う場面を、自分で作るのが得意ではないのです。
この子に「本当はどうしたいの」と聞いても、答えは「いいよ」に戻りやすいものです。それより、親のほうが先に、自分の小さな「ほんとはこうしたい」を口に出して見せるほうが届きやすくなります。冒頭の場面なら、こう言います。「おばあちゃんの家には行くけど、お母さんは本当は帰りに本屋に寄りたいんだよね」。決まった予定とは別に、親の希望を一つ添えるだけです。
週末の予定を決めるときの順番
- 決まっている予定 (家族の用事など) を先に伝える
- 親が自分の小さな希望を一つ、気軽な調子で言う (「本当は〜したい」)
- 子どもに答えを求めず、そのまま話を終える
- 次の週末も同じように親の希望を言う。子どもの側から希望が出てきたら、一つだけでも予定に入れる
大事なのは3つ目です。「あなたは?」と続けて聞かないでください。希望を言っても予定は崩れないし、誰も困らない。その様子を何度か見ると、子どもからも小さな希望が出てくることがあります。「こっちの公園がいい」「その日は家にいたい」といった一言です。
今日やってみること
今週末の予定を伝えるとき、親の小さな希望を一つだけ足して言ってみてください。たとえば「帰りにパン屋に寄りたいんだよね」です。そのあと「あなたは?」とは聞かずに、話を終えます。
気持ちを言葉に出しにくい子には、書きたいときだけ書ける場所を家の中に置く
気持ちを顔や言葉に出すのが不器用な子もいます。家族の前では、表情も口数もほとんど変わりません。不満や希望がないのではありません。口で言うより、好きなことに没頭する時間や、自室でのひとりの時間の中で整理するほうが合っているのです。この子の出口は、リビングからは見えない場所にあります。
この子には、話す機会を増やすより、家の中に、書きたいときにだけ書ける場所を置いておくほうが届きやすくなります。たとえば、リビングのコルクボードや冷蔵庫の横に、家族それぞれの付箋の欄をつくります。本人の欄も用意しておきます。書くかどうか、何を書くかは本人に任せます。空いたままの週があってもかまいません。
書かれたものがあったら、親は読むだけにします。書き込みで返したり、食卓で意味を確かめたりはしません。ここに書いたことはそのまま受け取られる、と本人がわかってくると、短い一行が置かれるようになることがあります。「土曜は部活のあと友だちと出かける」「この服はもう着ない」といった一行です。
口では出てこなかった希望が、家の中の見える場所に出てくる。それ自体が、この子にとっての出口の一つになります。
親の側にも利点があります。本人の様子を確かめる場所が一つ決まるので、「声をかけるべきか」を毎晩迷わずに済みます。返事が返ってこない時期に、どこまで話しかけてどこから待つかは、中学生の反抗期はほっとくべき?無視されるときの線引きで詳しくまとめています。
今日やってみること
今週中に、冷蔵庫の横などに家族の名前を書いた付箋の欄を作ってみてください。まず親が「金曜はカレーにしたい」のような一行を貼ります。子どもの欄は空けたままにして、書くように促しません。
同じようにしても変化が見えにくいときは、気質とタイミングを見る
ここまでの流れは、多くの家庭で役に立つ標準的な見方です。生活の土台を見る。反抗を引き出そうとしない。出口に合わせて条件を整える。ただ、この通りにしても手応えが見えにくい家庭があります。
理由の一つは、目の前の子がどの出口を使う子なのかを、見誤っていることです。「いいよ」と合わせる子だと思って、親が希望を言い続けたとします。でも実は、ひとりの時間で整理する子だった、ということは起こりえます。
もう一つはタイミングです。人には、外に向かって動きやすい時期と、内側でエネルギーを蓄える時期があります。蓄える時期には、誰でも口数が減り、自室にいる時間が長くなります。この静けさを、反抗期がない証拠や不調のサインと読み違えると、関わり方が空回りしやすくなります。
反抗の出方を、気質とタイミングの両方から読む考え方は、反抗期ピラーの反抗期はいつからいつまで?年齢より「中身の変化」で見るでまとめています。言い返す子・黙る子・外で出す子の違いや、反抗の終わりを見分ける段階も、そちらで確認できます。
気になるときの相談先
先ほどの表の「続いたら気にかけたい様子」が、重なって続くことがあります。眠れない、食べる量が大きく変わった、学校を休みがちになった、表情が沈んだまま戻らない、などです。そのときは、反抗期の問題として家庭だけで抱えないでください。
担任の先生、スクールカウンセラー、お住まいの自治体の教育相談窓口には、親だけで相談できます。子ども本人が動かなくてもかまいません。文部科学省は、スクールカウンセラーが児童生徒へのカウンセリングや「教職員及び保護者に対する助言・援助において効果を上げています」としています。子どもだけでなく、親の相談にも乗ってくれる人だということです。心身の不調が続くときは、小児科や児童精神科などの医療機関にも相談してください。
親だけでも使える相談先
こども家庭庁の「親子のための相談LINE」は、子育てや親子関係に悩んだときの窓口です。18歳未満のこどもと、その保護者などが相談できます。相談内容の秘密は守られます。深刻になってからでなく、迷った段階で使ってかまいません。
この記事の要点
反抗期がない、目立たないこと自体は問題ではありません。見るのは、不満や希望の出口がどこかにあるかです。あわせて、睡眠・食事・口数・学校の様子が保てているかを見ます。
反抗を引き出そうとはしません。「いいよ」と合わせる子には、親が先に小さな希望を言います。気持ちを言葉に出しにくい子には、書きたいときだけ書ける場所を家の中に置いておきます。
よくある質問
反抗期が来ないのは、心配しなくてよいのでしょうか
反抗期が来ないことだけで、心配する必要はありません。反抗期を経験しない青年は珍しくないと報告されています。心配したほうがよいのは、眠り・食事・学校の様子が崩れた状態が続くときです。そのときは、反抗期とは別の問題として、学校や相談窓口に相談してください。
反抗期がない子どもが増えているのはなぜですか
増えているという指摘はありますが、理由ははっきりしていません。須崎 (2023) は、普通の円満な家庭の中で、第二反抗期を持たない青年が増えているという指摘 (深谷, 2005) を紹介しています。
東京都の「こども・子育てお悩み相談室」のページで、尾木直樹さんは、暴力的な反抗期は近年減ってきていると感じる、と話しています。壁に穴をあけるような反抗のことです。同じ回答の中で、反抗期がない理由の一つも挙げています。親が子どもの意見や自己決定を大事にしていて、ぶつかり合う必要がない場合です。
どちらも公的機関の調査ではなく、専門家個人の実感にもとづく見方です。増えている理由を確かめた公的な調査は、確認できていません。
反抗期がなかった人の割合はどのくらいですか
研究では、3〜4割の青年が第二反抗期を経験していないと報告されています。須崎 (2023) が紹介している先行研究 (白井, 1996 / 福田, 2016) の結果で、全国規模の公的な調査ではありません。割合よりも、反抗がない子が少数派ではないと知っておけば十分です。
男の子がママにべったりなのは、いつまで続きますか
何歳で終わる、という区切りはありません。母親と仲がよいことと、自分で決める範囲を広げていくことは、同時に進むことがあります。見るのは、べったりかどうかではありません。友だちとの約束を自分で決める、好きなものを自分で選ぶ、といった場面が増えているかどうかです。そうした場面があれば、親から離れる準備は少しずつ進んでいます。











