先に結論をお伝えします。反抗期の終わりは、進学や受験といった一つの出来事で切り替わるものではありません。「ここから先は自分が決めていい」と本人が感じられる場面が、家の中で積み重なった結果として現れます。だから、きっかけを探すなら、外の出来事より家の中の扱いの変化を見るほうが早いのです。
反抗期が終わるきっかけは、進学や受験という出来事ではない
きっかけとしてよく挙げられるのは、高校進学、受験、部活動の引退といった環境の変化です。ただ、同じ出来事を通っても、落ち着いていく家庭とそうでない家庭があります。分かれ目は、出来事の有無ではありません。その前後で、親が本人に返した決定の範囲にあります。
文部科学省の家庭教育手帳は、思春期の項目で「言うことを聞かないのは、子どもの自立が始まった証拠。」と書いています。本文でも、次のように説明しています。「この時期に子どもが言うことを聞かなくなっても、いたずらに動揺したり抑えつけたりする必要はありません。それは子どもの自立や親離れが始まった証拠です」。言うことを聞かないのは、自分でやりたい気持ちが育ってきたしるしだ、ということです。
反抗が自立の始まりの現れなら、自立が実際に進んだとき、反抗はもとの役目を終えていきます。同じ出来事のときに、親がどう声をかけるかを、例で比べてみます。
| 出来事 | 終わりに近づいていく家の親の言葉 (例) | 変化が見えにくい家の親の言葉 (例) |
|---|---|---|
| 進学・クラス替え | 「新しい予定が決まったら、あとで教えて」。持ち物は本人が決める | 「持ち物そろった? 一回見せて」。確認の回数がかえって増える |
| 受験・部活動の引退 | 「締め切りはこの日だよ。資料はここに置いておくね」。結論は本人が出す | 「この中から選べばいいから」。候補を絞り、結論まで用意する |
| 体つきや生活の変化 | 部屋・服装・髪型には何も言わない | 「その髪、学校で何か言われない?」。心配から、見る範囲が広がる |
反抗は「関係」の中で起きている
第二反抗期を扱った研究発表 (小高, 2021) は、ある問いから出発しています。反抗は「必然的に現れるというよりは,親子の関係性により生じるのでは?」という問いです。
そして先行研究を引いて、次の見方を示しています。「反抗が生じるのは,青年の自律欲求に家族システムが対応できていないのでは?(白井,1997)」。自分で決めたい気持ちに、家のやり方が追いついていないと反抗が起きる、という見方です。
大学生102名への調査をもとにした一つの発表なので、断定できるものではありません。それでも、反抗を子ども側だけの現象として見ない点は、きっかけを考える手がかりになります。
自分で決めたい気持ちに、家の仕組みが追いついていないあいだは、押し返す動きが続きます。逆に、家の仕組みが先に動けば、押し返す必要そのものが減っていきます。これは、親の落ち度の話ではありません。子どもの変化の速さに、家のつくりが追いつく時間が必要だった、というだけです。
親子関係の研究 (渡邉ら, 2009) も、こんな知見を紹介しています。「青年期の親子関係は児童期の親子関係とは違い,心身の急激な発達を経験し,親に対する態度を変化させ,親も子どもの変化を認識し相互調整的に子どもに対する態度を変化させていく(久世・平石,1992)」。子どもが変わり、それを見た親も接し方を変えていく、ということです。
変わるのは子どもだけではありません。親の側の扱いも、一緒に動きます。終わりとは、その相互の調整が一周したときに見えてくる状態だと言えます。
今日やってみること
今夜、子どもに「〜した?」「〜持った?」と確認した回数を、正の字で数えてみてください。数えるだけで、減らさなくてかまいません。どこで親が決めているかが、目に見えるようになります。
反抗期が終わるサインは?家で先に出る4つの変化
終わりが近いサインは、会話の量より先に、用事と距離の取り方に出ます。「最近やさしくなった」という印象で見ないでください。次の4つのどれかが、家で起きているかどうかで見ます。
| 子どものこんな言葉・様子 | 親がついしがちな反応 | サインを消さない返し方 |
|---|---|---|
| 「寒くなったね」など、用のない一言が混ざる | 機嫌がいいだけだと受け流す | 「そうだね」とだけ返して、話を広げない |
| 「〜しといて」が「〜してもらえる?」になる。自分から頼みごとを持ってくる | 甘えが戻ったと受け取り、世話の量を増やす | 頼まれたことだけを引き受ける |
| 同じ部屋にいる時間が増える。部屋のドアが開いている時間が長くなる | 話しかける好機だと思い、質問を重ねる | 親は自分のことを続け、同じ部屋にいるだけにする |
| 親の失敗や知らないことに、いちいち腹を立てなくなる。親を一人の大人として扱う言い方が出る | 見下されたと受け取り、言い返す | 言い方より中身を聞き、「そうなんだ」と受け取る |
真ん中の列は、せっかくのサインを打ち消してしまいやすい反応です。サインが出たときに、親の関わりが一段増えることがあります。すると本人は、返ってきたはずの範囲をまた取り上げられたと感じます。そして、もう一度閉じることがあります。
友達の話が少し出るのも変化の一つ
家族以外の話題が少し出るようになるのも、関係が動いているサインです。家庭教育手帳は「思春期は仲間や友達の存在が、家族以上に重要になる時期でもあります。」と書いています。そのうえで、こう続けます。「心配だからといって、子どもの行動を監視したり、根ほり葉ほり話を聞きだそうとする必要はありませんが、普段からの会話を通じて、子どもと友達の関係を理解するよう心がけましょう」。
問い詰めなくてよいけれど、ふだんの会話の中で知っておこう、という意味です。出てきた話に質問を重ねず、そのまま受け取るほうが、次の話が出やすくなります。
なお、こうした変化は、まっすぐ進むとは限りません。試験や行事が重なった週に、また口数が減ることもあります。段階として全体を見る方法は、反抗期はいつからいつまで?の「中身の変化」の表にまとめています。返事がない時期の線引きは、中学生の反抗期はほっとくべき?で詳しく扱っています。
今日やってみること
今日、子どもから用件以外の一言が出たら、「そうだね」「へえ」とだけ返してみてください。そこから質問を続けずに、話を終えます。何も出なかった日は、何もしなくてかまいません。
終わりに近づく家で起きていること。親が手放す「決まりの卒業」
親の側からきっかけを作れるとしたら、関係を良くする働きかけではありません。家の決まりを一つずつ卒業させていくことです。やり方は、いま親が管理している項目を紙に書き出すだけです。それを、本人に返すもの・移す途中のもの・手放さないものに仕分けます。
| いま親が管理していること | 中学生の段階での扱い | 卒業したと判断する目安 |
|---|---|---|
| 起きる時刻の声かけ | 本人に返す | 目覚ましを自分でかけ、遅れた日の責任も本人が受ける |
| 持ち物・提出物の確認 | 本人に返す | 忘れたときに、親が学校へ届けない |
| 服装・髪型・部屋の様子 | 本人のものとして扱う | 口を出すのは安全と清潔に関わる範囲だけ |
| 勉強の中身と時間 | 本人に返す | 親が共有するのは、テストや提出の期限だけ |
| 交友関係 | 知ってはおくが、選別しない | 会話の中で自然に知る範囲にとどめる |
| スマホの使い方 | 移す途中 (見直す日を決めて少しずつ) | 本人がルールの案を出せる |
| お金・安全・健康・学校との連絡 | 手放さない | — |
スマホのように、一度に全部は返せないものもあります。その場合は、見直す日を決めて段階的に移します。誰が案を出すかの決め方は、中学生のスマホのルールで整理しています。
最初の2週間でやること
- いま親が口を出している項目を、思いつくまま紙に書き出す (数が多くてかまいません)
- そのうち、やめても安全・健康・お金に関わらないものを1つだけ選ぶ
- 「これはもう任せる」と一度だけ伝え、2週間は結果に触れない (うまくいった日もほめない)
うまくいった日をほめないのには、理由があります。ほめた瞬間に、その項目がまた親の評価の対象に戻るからです。
先ほどの研究発表 (小高, 2021) も、考察でこう述べています。「統制的な養育は青年の反抗を生起させ,受容的で自律性を重んじた養育態度は内面的な反抗を抑制していると思われる」。親が細かく管理すると反抗が起きやすく、任せて受け止めると反抗が内側で収まりやすい、ということです。評価を添えずに渡しきることが、卒業の仕上げにあたります。
一度にまとめて手放さない
複数の項目を同時に返したり、「もう知らないから好きにして」という形で渡したりしないでください。子どもには、放り出されたという合図として届きます。
渡すのは1つずつ、言い方は一度だけです。親が関心を持ち続けていることは、生活の連絡を切らさないことで伝わります。
今日やってみること
今夜、いま口を出していることを紙に5つ書き出してみてください。その中から、安全・健康・お金に関わらないものを1つ選び、丸をつけます。「これはもう任せる」と伝えるのは、明日以降で大丈夫です。
待っているあいだに、親ができること・しなくてよいこと
できることは、生活の土台と事務的な連絡を切らさないことです。しなくてよいのは、終わりを早めるための特別な働きかけです。
家庭教育手帳には、こう書かれています。「むやみな干渉やお説教はできるだけ控えて、子どもの力を信じながら、あたたかく見守りましょう。ただし、腫れ物にさわるように接するのではなく、これまで以上に会話などを通じてかかわる努力が欠かせません。その際には、行動の結果にはきちんと責任が伴うことを自覚させることも大切です。」。口出しは控えつつ、話しかけるのはやめない、という意味です。
待つことと、関わりをやめることは別です。朝のあいさつ、食事、予定の共有は、口数が減っている時期こそ変えずに続けます。
しなくてよいこと
終わったかどうかを本人に確かめる (「最近、落ち着いてきたね」)。関係を変えるために、旅行や外食を特別に用意する。反抗していた時期について、説明や謝罪を求める。
どれも本人からは、「まだ自分が親の課題として扱われている」という合図に見えやすいものです。せっかく戻りかけた距離を押し戻します。
親の側の負荷も、小さくありません。渡邉らの論文は、ステインバーグらの知見を紹介しています。「思春期・青年期の子どもの心身の発達的変化は子ども自身にとっての対処すべき課題であるが,それは同時に親にとっても大きな刺激や課題であり,子どもに対する態度変容が求められる」。子どもの成長は、親にとっても接し方を変える課題になる、ということです。
待つ時間がつらいのは、親の忍耐が足りないからではありません。親の側にも課題が来ているからです。自分の消耗が先に限界に近づいているときの線の引き方は、中学生の子どもへのイライラが止まらないときの境界線にまとめています。
今日やってみること
明日の朝、返事があってもなくても、「おはよう」を一回だけ言ってみてください。返事を待たずに、そのまま自分の支度を続けます。今週はこれを毎朝続けます。
終わりが見えないと感じるとき
長引いていると感じるときは、戻ったのではないことがよくあります。外の負荷が重なっている時期なのです。受験、部活動の人間関係、進級。こうした時期は、家で出せる余力が減るので、口数も態度も一時的にきつくなります。
負荷が下がるまでは、新しい決まりを足すのは後回しにします。進路の話を持ち出すのも、あとにします。生活の土台だけを保ちます。
いっぽうで、反抗期の枠で考えないほうがよい変化もあります。
- 眠れない、食事の量が大きく変わった
- 学校を休みがちになった
- 表情が沈んだまま戻らない
- お金や持ち物の使い方が急に変わった
こうした変化が重なって続くときは、口のきき方の問題として扱わないでください。暴力や物を壊す行動で、身の危険を感じるときも同じです。担任の先生、スクールカウンセラー、お住まいの自治体の教育相談窓口には、親だけで相談できます。子ども本人が動かなくてもかまいません。心身の不調が続くときは、小児科や児童精神科などの医療機関にも早めに相談してください。
親だけでも使える相談先
こども家庭庁の「親子のための相談LINE」は、子育てや親子関係について悩んだときの窓口です。「こども(18歳未満)とその保護者の方などが相談できる窓口です」と案内されています。「相談内容の秘密は守られます」ともされています。深刻になってからでなく、迷った段階で使ってかまいません。
反抗が最初から目立たない子の見方は、反抗期がない子は大丈夫?で別に整理しています。
同じように手放しても、終わり方が子どもによって違う理由
ここまでの手順は、多くの家庭で足場になる進め方です。ただ、同じ順番で決まりを卒業させても、変化の出方は子どもによってかなり違います。理由の一つは、生まれ持った受け取り方の傾向、つまり気質です。
自分のペースを乱されるのを嫌う子は、手放しが進むと、まず予定の面に変化が出ます。「今日は遅くなる」と、自分から先に言うようになります。それが、その子なりの合図です。
この傾向の子には、家族の予定を決めるときの順番が効きます。本人の予定を先に聞いて先に書き込み、家の予定をそのあとに置くのです。順番が逆だと、せっかく返した範囲が、家の都合で上書きされたように受け取られます。
関係が先に立つ子は、少し違う形で出ます。話した内容が家族のあいだに広がると、話す量そのものを減らして閉じてしまいます。この傾向の子には、本人が話したことを、ほかの家族に伝えるかどうかを本人に決めてもらいます。親は、預かったままにしておきます。そのほうが、次の話が続きます。この子の終わりは、会話の量ではなく、話の行き先を自分で決められる状態として訪れます。
もう一つの軸は、タイミングです。人には、外に向かって動きやすい時期と、内側でエネルギーを蓄える時期があります。蓄える時期に手放しを進めても、しばらくは反応が返ってこないことがあります。そこで元の管理に戻すと、卒業させたはずの項目が振り出しに戻ります。
この記事のポイント
終わるきっかけは、外の出来事ではなく、家の中で返した決定の積み重ねです。進み方を決めるのは、その子の気質と、今が動く時期か蓄える時期かという見立てになります。
気質と時期という2つの軸で反抗の出方を読む方法は、反抗期はいつからいつまで?小学校高学年〜中学生の反抗期は、年齢より「中身の変化」で見るで体系的にまとめています。
よくある質問
反抗期が急に終わることはありますか
急に終わったように見える日はありますが、変化はその前から少しずつ進んでいます。進学や部活動の引退の直後に、態度が変わる例は多くあります。ただ、その時点までに家の中で返ってきた決定の範囲が、土台になっていることがほとんどです。出来事そのものより、出来事をきっかけに親の扱いが変わったかどうかを見てください。
反抗期はいつ頃落ち着きますか
小学校高学年から中学生のあいだに始まり、高校生にかけて落ち着いていく子が多いとされています。ただし幅が大きく、年齢で早い遅いを判断する材料にはなりにくいものです。資料ごとの時期の幅と、段階で見る方法は反抗期はいつからいつまで?にまとめています。
思春期の終わりのサインは?
心も体も大人であることが、本人の中で定まってくるころが目安になります。家庭教育手帳は、思春期を3つの段階に分けています。
「心も身体も大人ではないが全くの子どもでもない状態(思春期初期)から始まり、次いで大人と子どもが入り交じりせめぎあう状態(思春期中期)、そして最後には心も身体も大人であることを確かなものとしていく状態(思春期後期)の3つの段階に分けることができます」。子どもと大人のあいだから始まり、最後は大人である自分を確かにしていく、という流れです。
家で見えるのは、自分の考えを言葉にして、相手と折り合いをつけられる場面が増えることです。











