先に答えをお伝えします。反抗期が激しく出る子に、「性格が悪い」「育て方を間違えた」といった共通の原因はありません。激しく出やすいのは、その子の生まれ持った受け取り方 (気質) と、親の関わり方がぶつかりやすい組み合わせになっているときです。そこに受験や進級などの外の負荷が重なると、さらに強く出ます。
研究では、親子の葛藤はおおむね穏やかだという報告が多くあります。そのため、激しく出ている家庭ほど「うちだけ」と感じやすくなります。けれども、激しさは子どもの欠陥でも、親の失敗でもありません。組み合わせのずれが、表に出ている状態です。ずれは見直せます。
ただし、安全に関わる場面は別です。手が出る、家を飛び出して連絡がつかない、自分を傷つける。こうした場面は反抗期の範囲で抱えず、後半の相談先を使ってください。
反抗期が激しい子の特徴は、性格より「ぶつかる組み合わせ」に出る
反抗期が激しい子・強い子に、共通する性格はありません。共通しているのは、親とのやりとりの中に、毎回同じところで引っかかる点があることです。この記事では、それを「ぶつかる点」と呼びます。
思春期の反抗を調べたインタビュー研究 (斉藤・青木, 2021) があります。親から距離をとりたい、自立したいという気持ちと、親に頼りたい気持ちのあいだで、葛藤が生まれる。研究はその葛藤が「関わりへの抵抗や親への反発といった反抗行動・態度として表れ,親との衝突に繋がる」と整理しています。離れたい気持ちと頼りたい気持ちがぶつかって、それが親への反発として出る、ということです。
葛藤そのものは、成長に伴う自然なものです。激しさを分けるのは、その葛藤が家の中のどこにぶつかるかです。
同じ研究は、先行研究の指摘も紹介しています。親子の葛藤は、比較的頻度が少なく穏やかだという報告が多い、というものです。激しく出る家庭が少数派に見えるのは、このためです。少数派だからといって、異常というわけではありません。
激しく出る子に見られる様子
激しく出る子の様子は、言葉、物、体の動きの3つに表れやすくなります。どれも、子どもの中で何かがあふれた結果として出ているものです。
| 子どもがすること | 子どもの側で起きていると考えられること | 親がついしてしまうこと |
|---|---|---|
| 「うるさい」「うざい」と言い返し、止まらない | 言われたことを処理しきれず、まず押し返して距離をとろうとしている | 親への攻撃と受け取り、その場で言い負かそうとする |
| ドアを強く閉める、物を投げる、壁を叩く | 言葉にできない量の気持ちを、体の外に出している | 人への暴力の前触れだと決めつけ、強く押さえ込もうとする |
| 部屋にこもる、家を飛び出す | これ以上その場にいると自分が崩れる、と感じて場を離れている | 話の途中で逃げた、無視したと受け取って追いかける |
右の列は、どれも親として自然な反応です。ただ、読み違えたまま対応すると、子どもはもう一段強く押し返すしかなくなります。そして、次の衝突がさらに激しくなります。
反抗期がひどくなる原因は、3つが重なるとき
反抗期がひどくなるのは、次の3つが重なったときです。どれか1つだけで激しくなることは、少なめです。重なりを1つほどくだけで、衝突の強さが下がることもあります。
(何に追い詰められやすいか)
(何で収めようとするか)
(受験・進級・人間関係)
毎回同じ場所に来る
3つめの外の負荷については、小規模な調査 (須崎, 2023) があります。大学生に過去をふり返ってもらったところ、反抗的な気持ちを抱いたのは「受験の時や試験期間など特定の期間のみ」と答えた人が一定数いました。論文はこれを、反抗の気持ちが親との関係だけで生じているのではない、と考察しています。「試験や受験などの外的要因の影響が大きいことを示している」のではないか、という見方です。試験や受験が近いと、反抗も強まりやすいということです。
このうち、親が自分で動かせるのは、まん中の「関わり方」だけです。気質は生まれ持ったもので、外の負荷もすぐには減らせません。だからこそ、気質と関わり方のどこがぶつかっているかを知ると、手の打ちどころが見えてきます。
今日やってみること
今夜、いちばん最近の言い合いを一つ思い出して、「最後に自分が言った一言」と「子どもがしたこと」を一行ずつメモしてみてください。ほかの言い合いも思い出したときに足していくと、毎回どこでぶつかっているかが見えてきます。
激しく出やすい組み合わせ。気質と関わり方の対比
同じ親の対応でも、子どもの気質によって、収まる子と激しくなる子に分かれます。代表的な3つの組み合わせを並べます。どの気質がよい悪いという話ではありません。親の関わり方との相性の話です。
| 衝突の場面 | その直前に親がしがちなこと | この子の受け取り方 | 落ち着いてから届きやすいこと |
|---|---|---|---|
| 家を飛び出す。止められると押しのけようとする | 玄関で止める。「次に出ていったら」と条件を足す | 決まりや見張りが増えるほど息が詰まる。追い詰められると、体ごとその場から出ていこうとする | 落ち着いている日に、頭を冷やすときの「離れ方」を本人と決めておく |
| 物を投げる、壁を叩く | 反応がないので言葉を重ね、返事や反省の言葉を引き出そうとする | 気持ちを顔や言葉に出すのが不器用。溜めたものが限界を超えると、一気に物に出る | 壊れた物の始末 (片づけ・直し方) を、本人が方法と期日を決めて引き受ける |
| 泣きながら叫ぶ。言葉が止まらなくなる | 「そもそも約束を破ったのはあなた」と、経緯の正しさで締めくくる | 正しさより先に、気持ちを受け止めてほしい。気持ちが置き去りのまま決着をつけられると崩れる | いちばんきつかった一言を本人に1つ挙げてもらい、親はその一言を使わないと決める |
表は「そうなりやすい傾向」です。同じ傾向の子が、全員このとおりに動くわけではありません。1人の子に、2つの傾向が混ざっていることもあります。
家を飛び出す子には、「離れ方」を先に決めておく
決まりや見張りが増えるほど息が詰まる子がいます。この子が家を飛び出すのは、親を困らせるためではないことが多いものです。その場から、自分を逃がすための動きです。玄関で止めたり、条件を足したりすると、「閉じ込められる」と受け取ります。そして、押しのけてでも出ようとします。
この子には、離れること自体を禁止しないほうが届きます。代わりに、落ち着いている日に、本人と「離れ方」を決めておくのです。決めるのは3つだけです。
落ち着いている日に、本人と決めておく「離れ方」
- 頭を冷やすときに行ってよい範囲 (家の周り、近くの公園、自分の部屋など)
- 戻る目安の時刻 (夜なら何時まで、など)
- 出るときに残す一言 (「ちょっと出てくる」のメッセージ1通だけ、など)
範囲と時刻の案は、本人に先に出してもらいます。親が付け加えるのは、夜遅い時間帯と、安全に関わる条件だけにします。
こうしておくと、衝突の最中に子どもが出ていくとき、親は止めずに「決めたとおりね」とだけ言えます。本人にとっては「出ていった」ではなく、「決めたやり方で離れた」になります。戻ってきたあとに、気まずさが残りにくくなります。
物に当たる子には、始末の方法を本人に決めてもらう
気持ちを言葉に出すのが不器用な子は、口論のあいだも表情が変わりません。黙っているように見えます。その沈黙に親が言葉を重ねるほど、内側に溜まる量が増えます。そして限界を超えたところで、一気に物に出ます。
物に当たったあと、「なぜあんなことをしたの」と聞いても、うまく言葉になりません。また黙ることになります。代わりに扱うのは、壊れた物、散らかった物の「始末」です。
落ち着いてから、親は事実だけを短く伝えます。「ドアの留め具がゆるんだね。どう直すかは、あなたが決めて」。決めてもらうのは、たとえば次のようなことです。
- 片づけるのか、直すのか
- 直すなら、いつまでにするのか
- お小遣いから一部を出すのか
決まったら、親はそれ以上の反省を求めません。
自分で決めたことは守る、という受け取り方をする子がいます。この子には、謝罪の言葉をしぼり出すより、自分で決めた始末をやり切るほうが、責任を取った実感になりやすいものです。親の側も、「反省しているのかどうか」を毎回確かめなくて済みます。
泣きながら叫ぶ子には、引き金になった一言を本人に挙げてもらう
正しさより先に、気持ちを受け止めてほしい子がいます。この子は、衝突の中身より、最後に言われた一言で崩れることがよくあります。「そもそも約束を破ったのはあなたでしょう」は、親から見れば事実の確認です。でも、この子には「あなたの気持ちはどうでもいい」と届きやすい言葉です。
この子との見直しは、何が起きたかの順番をたどることから始めないほうが届きます。落ち着いてから、たとえば週末に二人で出かける車の中で聞きます。「この前、お母さんの言ったことで、いちばんきつかったのはどれ」。挙げてもらうのは1つだけです。
挙がった一言が意外なものでも、言い分は足しません。「わかった。その言い方は次から使わない」とだけ答えます。用件 (ゲームの時刻など) は、そのまま残してかまいません。変えるのは用件ではなく、引き金になっていた一言だけです。どの言葉で崩れるかを本人が教えてくれると、次の衝突で親が同じ場所を踏まずに済みます。
今日やってみること
ほかの2つは衝突があったあとの場面なので、今週できるのは「離れ方」の最初の一歩です。落ち着いている日に、「頭を冷やしたいとき、どこまでなら行っていい?」と本人に一度だけ聞いてみてください。答えは聞くだけで、今日は決めきらなくてかまいません。
その場の対応と、落ち着いてからの対応を分ける
激しい衝突の最中にやることは、安全を保つことだけです。気質に合わせた関わりや決まりの見直しは、すべて落ち着いてからに回します。
その場で中身を話し合おうとすると、親も子も引けなくなります。こども家庭庁が掲載している、体罰等によらない子育てについてのとりまとめがあります。そこでも、子どもがすぐに気持ちを切り替えられないときの方法として、待つことや「場面を切り替えること」が挙げられています。その場の空気をいったん変える、ということです。
口論の言葉そのものへの対応 (用件だけ言って親が先に場を離れる) は、小学生の反抗期。小4・小5・小6の違いと、暴言に2段階で対応するで詳しくまとめています。ここでは、物に当たる・飛び出すといった、体の動きが出ている場面に絞ります。
物に当たる・飛び出すとき、その場でやること
- 親と子の体の距離をあける。割れ物や刃物など危ない物が近くにあれば、黙って遠ざける
- 出ていこうとする子の前に立ちはだからない。腕をつかんで引き止めない
- 言うのは「気をつけて」「何時に戻る?」のどちらか一言だけにする
- 親自身が深呼吸をする、窓を開けるなどして、先に自分の体を落ち着ける
4つめは後回しにされがちですが、大事な手順です。先ほどのとりまとめも、保護者に余裕がないときの工夫を勧めています。深呼吸をする、ゆっくり数を数える、といった方法です。親が落ち着いて見えると、子どもも戻る場所を見失わずに済みます。
逆効果になりやすい関わり方
衝突の直後に、きょうだいや同級生と比べる。「そんなことをする子は家にいなくていい」と言う。戻ってきた子に、その夜のうちに経緯の説明を求める。
どれも子どもには、「戻る場所がない」という意味で届きやすい関わり方です。次に離れるときの離れ方が、激しくなります。
落ち着いてからやることは、先ほどの対比表の右の列のどれか1つです。一度に全部を見直そうとしなくてかまいません。目の前の子にいちばん近いと思える1つから始めてください。
今日やってみること
今夜のうちに、リビングにある割れ物や重い物を一つ、棚の奥か別の部屋に移してみてください。衝突の最中に、手に取れる位置から危ない物を減らせます。
安全に関わるとき (暴力・家出・自傷) の相談先
反抗期の範囲を超えているかどうかは、激しさの度合いでは判断しません。誰かの安全が脅かされているかで判断します。次のような場面は、家庭の中だけで抱えず、外の窓口を使ってください。
| こんなとき | 相談先 |
|---|---|
| 親やきょうだいに手が出て、身の危険を感じる。家を飛び出したまま連絡がつかず、夜になっても戻らない | 緊急のときは110番。警察庁は「事件や事故に関する緊急通報は「110」番」としています |
| 緊急ではないが、物を壊す・家を飛び出すことが続いていて、どうすればよいか相談したい | 最寄りの警察署、または警察相談専用電話「#9110」(緊急でない相談の窓口)。都道府県警察の少年相談窓口もあります |
| 子どもへの関わり方や親子関係のことを、福祉の窓口に相談したい | 児童相談所相談専用ダイヤル 0120-189-783 (通話無料)。虐待の相談以外にも、こどもの福祉に関する相談を受け付けています |
| 子どもの気持ちや権利のことを、親だけで相談したい | 法務省の「こどもの人権110番」0120-007-110。こどもに関する悩みを持つ大人も利用でき、相談は無料、秘密は守られます |
| 子ども本人が、誰かに話したがっている | 文部科学省の「24時間子供SOSダイヤル」0120-0-78310。子どもがひとりで悩まずに、いつでも電話で相談できる窓口です |
次のようなときは、反抗期の問題として扱わないでください。
- 子どもが自分を傷つけている
- 「消えたい」「死にたい」と口にする
- 眠れない・食べられない状態が続く
担任の先生、スクールカウンセラー、お住まいの自治体の教育相談窓口に、早めに相談してください。小児科や児童精神科などの医療機関も相談先です。文部科学省は、スクールカウンセラーが児童生徒へのカウンセリングや、「教職員及び保護者に対する助言・援助において効果を上げています」としています。子どもだけでなく、親の相談にも乗ってくれるということです。子ども本人が動かなくても、親だけで相談できます。
親だけでも使える、気軽な相談先
こども家庭庁の「親子のための相談LINE」は、子育てや親子関係について悩んだときの窓口です。こども (18歳未満) とその保護者などが相談できます。相談内容の秘密は守られます。激しい衝突のあと、誰かに話して自分を落ち着けたいときにも使えます。
今日やってみること
上の表のうち、110番以外の番号を一つ選んで、今日のうちにスマホの連絡先に登録しておいてみてください。いざというとき、探す手間がなくなります。
同じ対応でも収まらないときは、ぶつかる組み合わせを見立て直す
ここまでの進め方は、多くの家庭で衝突の強さを下げやすい標準的な手順です。その場では安全だけを守る。落ち着いてから、組み合わせに合わせて1つ見直す。ただ、この通りにしても激しさが変わらない家庭があります。
理由の一つは、目の前の子がどの組み合わせに当たるのかを、読み違えていることです。家を飛び出す子だと思って、離れ方を決めたとします。でも実は、気持ちを置き去りにされて崩れていた子だった、ということは起こりえます。表面の行動は似ていても、ぶつかっている点が違えば、効く関わり方も変わります。
もう一つはタイミングです。人には、外に向かって動きやすい時期と、内側でエネルギーを蓄える時期があります。動きやすい時期には、同じ葛藤が言葉や体の動きとして外に出やすくなります。反抗が一時的に激しく見えることがあるのです。時期による波を「子どもが悪くなった」「関わり方が全部まちがっていた」と読むと、親のほうが先に疲れ切ってしまいます。
子どもの気質と時期の両方から反抗の出方を読むことを、このサイトでは「見立て」と呼んでいます。その考え方は、反抗期はいつからいつまで?年齢より「中身の変化」で見るでまとめています。言い返す子・黙る子・外で出す子の違いや、反抗の終わりに近づいているかを見分ける段階も、そちらで確認できます。
返事が返ってこない時期の線引きは、中学生の反抗期はほっとくべき?無視されるときの線引きを読んでください。親自身が限界に近いときは、中学生の子どもへのイライラが止まらないときの境界線もあわせてどうぞ。
この記事の要点
反抗期が激しく出るのは、性格や育て方の問題ではありません。子どもの気質と親の関わり方がぶつかる組み合わせに、外の負荷が重なったときです。衝突の最中は、安全を保つことだけに絞ります。
落ち着いてから、飛び出す子とは「離れ方」を決めます。物に当たる子には、始末を本人に決めてもらいます。気持ちが置き去りで崩れる子には、引き金の一言を挙げてもらいます。手が出る、連絡がつかない、自分を傷つけるときは、すぐに外の窓口を使ってください。
よくある質問
反抗期がひどいのは病気ですか
反抗期の激しさだけで、病気かどうかは決められません。病気かどうかを判断できるのは医師です。眠れない、食べられない、学校に行けない、自分を傷つける。こうした様子が反抗とあわせて続くときは、反抗期と決めつけないでください。スクールカウンセラーや自治体の教育相談窓口、小児科や児童精神科などの医療機関に相談してください。
反抗期は親のストレスが原因ですか
親のストレスが反抗期の原因だとは言えません。反抗期は、子どもが親から距離をとり、自立していく過程で起きるものです。ただ、親に余裕がない時期は、言葉が強くなりやすく、衝突が長引くことはあります。
こども家庭庁が掲載しているとりまとめも、振り返りを勧めています。子どもへの否定的な気持ちが、自分の体調や忙しさ、孤独感と関係していないか。そう振り返ると、気持ちが少し落ち着くことがある、としています。親が休むことは、衝突を減らすための準備の一つです。
反抗期の子どもが家出をしたら、どうすればいいですか
行き先と連絡がつくかを確かめ、つかなければ警察に相談してください。夜になっても戻らない、危険な場所にいるかもしれないというときは、迷わず110番に連絡します。
近所の公園や友だちの家にいるとわかっていて、連絡も取れることもあります。そのときは、迎えに行くかどうかより、戻ったときに責めずに迎えられる準備を優先します。家を飛び出すことが続くときは、落ち着いている日に本人と「離れ方」を決めておくと、行き先がわからなくなる事態を減らしやすくなります。
うちの子だけ反抗期がひどいのはなぜですか
激しく出る家庭は多数派ではありませんが、あなたの家だけでもありません。研究では、親子の葛藤はおおむね穏やかだという報告が多く、そのぶん激しく出る家庭は目立ちます。激しさを分けるのは、子どもの気質と親の関わり方の組み合わせと、受験や進級などの外の負荷です。ほかの家と比べるより、自分の家でどこがぶつかっているかを見るほうが、次の一手を決めやすくなります。











