先に答えを出します。ゲームの時間は、長さの数字だけを決めても、この夕方の場面は変わりません。先に決めるのは、何をもって終わりにするかという合図と、やめたあとの最初の予定の2つです。この2つが決まってから長さの話に戻ると、数字のほうは短い相談で決まります。
平均の数字も先にお伝えします。文部科学省・国立教育政策研究所が令和6年度の全国学力・学習状況調査にあわせて行った保護者への調査では、小学校6年生が学校のある日にテレビゲームをする時間は、平均で1日1時間43分でした。ただ、この数字をそのまま家の目標にしても、夜の押し問答はあまり減りません。理由は、長さの数字が「始まってからどれだけ経ったか」の話であって、「どう終わるか」の話を含んでいないからです。
ゲームの時間は、長さより先に「終わりの合図」と「やめたあとの予定」を決める
決める順番を変えます。長さの数字は3番目で、1番目は終わりの合図、2番目はやめたあとの最初の予定です。
終わりの合図とは、何が起きたらその日のゲームを閉じるか、という目印のことです。時計の針だけを目印にすると、針を見て告げる役は親に固定されます。すると、毎日の最後の場面が「親に止められた」という形で終わります。一方、合図をゲームの中の区切り(1試合が終わる、面をひとつ越える、一緒に遊んでいる相手が抜ける)に置くと、終わりは本人の手の中で起きます。同じ時刻に終わっても、誰の手で終わったかが違うと、翌日の抵抗の強さが変わります。
やめたあとの最初の予定は、もっと見落とされます。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、夜ふかしの原因になりやすい「就寝時刻の先延ばし」について触れたうえで、こう書いています。「就寝時刻の先延ばしをやめることは、余暇時間の減少をもたらす場合があります。適切な余暇活動が減ることは、ストレスの増加や抑うつにつながる可能性があるため、注意が必要です。就寝時刻付近の余暇時間を、日中に十分補えるように工夫すると良いでしょう」。
つまり、夜のゲームを削るだけでは、本人の側では楽しい時間が純粋に減ったことになります。削った分をどこかに戻さないまま長さだけを短くすると、抵抗が強くなるのは自然な反応です。やめたあとに風呂、夕食、翌日の持ち物の準備といった決まった予定が続いていれば、ゲームは「切られるもの」ではなく「次に明け渡すもの」になります。
最初の1週間でやること
- 始める前に、本人に「今日はどこで終わる?」とだけ聞く。答えは時刻でもゲームの中の区切りでもよい
- 終わったあとに続く予定(風呂・夕食・翌日の支度)を、毎日同じ順番にする
- 親からの声かけは、合図の手前に一度だけ。合図の時点では何も言わずに待つ
- 1週間たってから、長さの数字を本人と見直す
3番の「合図の時点では何も言わずに待つ」がいちばん難しいところです。待っているあいだに終わらなければ、合図の置き方が合っていなかったということなので、翌日は合図のほうを変えます。長さを削る方向に手を出すのは、合図が機能してからにします。
小学生のゲーム時間の平均は。平日の数字と、学年が上がったときの変化
公的な調査で確かめられるのは、平日(学校のある日)の平均です。令和6年度の全国学力・学習状況調査にあわせて実施された保護者への調査では、小学校6年生のテレビゲームの時間は1日1時間43分でした。この設問のテレビゲームには、コンピュータゲーム、携帯式のゲーム、スマートフォンなどのゲームが含まれます。
| 学校外での過ごし方(平日・小学校6年生) | 令和3年度 | 令和6年度 |
|---|---|---|
| テレビゲーム | 1時間25分 | 1時間43分 |
| スマートフォン | 43分 | 1時間5分 |
| 勉強 | 1時間9分 | 1時間3分 |
3年のあいだにゲームの時間は18分増え、勉強の時間は6分減っています。中学校3年生のテレビゲームは1日1時間48分で、小学校6年生との差は5分しかありません。学年が上がればゲームの時間が自然に短くなるという前提は、この数字では支えられません。小学生のうちに終わり方の形が決まっていないと、同じ押し問答が中学でも続きます。中学生のスマホの使用時間は中学生のスマホの使用時間の決め方に、ルール全体は中学生のスマホのルールの作り方にまとめています。
こども家庭庁の令和7年度青少年のインターネット利用環境実態調査(速報)でも、小学生(10歳以上)がインターネットで何をしているかの上位は動画視聴とゲームで、ゲームは85.5%でした。インターネットにつなぐ機器としてゲーム機を使っている小学生は70.6%です。小学生のネット利用時間の平均は約3時間54分ですが、これは動画や調べものも含んだ合計なので、そのままゲームの時間として読むことはできません。
休日については、同じ精度の公的な平均が見当たりません。民間の調査では「休日は2時間」という回答が多いとされますが、調査ごとに対象も聞き方も違います。そのため、休日は平均から決めるのではなく、その日の予定から逆算するほうが現実的です。出かける予定、習い事、夕食の時刻を先に置き、残った時間のどこに入れるかを本人と決める。休日のゲームが長く見えるのは、ゲームが長いというより、ほかの予定が入っていない日だから、ということがよくあります。
1日何時間からやりすぎか。時間より先に見る3つのサイン
何時間からが「やりすぎ」かを決める一律の境目は、公的な資料にはありません。ただ、生活の側から引ける目安はあります。厚生労働省の睡眠ガイドは、こどもについて「小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保する」としたうえで、「小・中・高校生は1日当たり60分以上からだを動かし、スクリーンタイムは2時間以下にすることが推奨されています」と紹介しています。スクリーンタイムにはテレビ視聴や動画も含まれるので、ゲームだけで2時間という読み方はできません。
長さそのものより先に、次の3つを見るほうが判断しやすくなります。
時間より先に見る3つのサイン
1. 就寝時刻が後ろにずれ続けているか(睡眠ガイドはこれを「就寝時刻の先延ばし」と呼び、ゲームが止められないことをその行動のひとつに挙げています)。2. 宿題や支度が、ゲームのあとに回されて終わらない日が増えているか。3. やめたあとに荒れる、あるいは何もする気が起きない状態が続くか。
この3つのどれにも当てはまらないなら、2時間を超えていてもすぐに手を入れる必要はありません。逆に、1日30分でも就寝時刻が後ろにずれ続けているなら、長さではなく終わる時刻のほうに問題があります。見るのは総量ではなく、ゲームが生活のどこを押しのけているかです。
「依存かどうか」を家庭で判定しない
やめられない状態が長く続き、睡眠や食事、学校生活にはっきり影響が出ているときは、時間のルールの問題として扱わないでください。担任の先生やスクールカウンセラー、自治体の教育相談窓口に相談し、心身の不調をともなう場合は医療機関の受診を検討してください。家庭で診断名をあてはめる必要はありません。
時間制限が逆効果になるとき、効くとき
まず、制限そのものが効かないわけではありません。先ほどの保護者への調査では、「ゲームの時間を限定している」保護者の子どもの方が、テレビゲームの時間が短いという結果が出ています。問題は制限の有無ではなく、運用の仕方のほうにあります。
| よくある止め方 | 子どもの側で起きること | 置き換え方 |
|---|---|---|
| 親が時計を見て「あと10分」と予告する | 終わりを告げる役が親に固定され、本人は時計を見なくなる | 残り時間を本人が自分で見る形にする |
| 守れなかった日に本体を取り上げる | 時間の話が、返す・返さないの交渉に置き換わる | 守れなかった日の扱いを、決めるときに先に言葉にしておく |
| 試合や面の途中で切る | 投げ出した形が記憶に残り、翌日も「あと1回」が必要になる | 切る位置をゲームの中の区切りに合わせる |
| 日によって長さを変える | 基準が親の機嫌に見え、交渉の余地があると学習する | 長さは据え置き、変えるのは終わりの合図のほうにする |
いちばん上の行は、気づかないうちに続いていることが多い形です。親が時計係を引き受けているあいだ、本人には時計を見る理由がありません。見る必要がないので上達もしません。そして毎日、終わりの場面でぶつかるのは時計を持っている側です。この役を手放すのは、子どものためというより、親の側が毎晩の小競り合いから降りるためと考えたほうが続きます。
「あと10分」と予告したくなる気持ちの中身も、一度見ておく価値があります。そこにあるのは多くの場合、このままだと寝るのが遅くなるという具体的な心配と、放っておく親だと思われたくないという別の気持ちが混ざったものです。前者は予定を動かせば解決しますが、後者は子どもを動かしても解決しません。混ざったまま声をかけると、言葉は時間の話なのに、子どもには圧として届きます。
家庭のゲームのルールの例と、決める手順
ルールは長いほど守られにくくなります。本記事の順番に沿うなら、必要なのは3行です。
3行で足りるゲームのルール(例)
- 終わりの合図:平日は1試合が終わったところ。休日は夕食の支度が始まったところ
- やめたあと:風呂に入る。そのあと翌日の時間割をそろえる
- 守れなかった日:次の日は合図を1段早いところに置く。本体は預からない
3行目を先に決めておくのが要点です。ここが空欄のままだと、守れなかった日に親がその場で罰を考えることになり、毎回ちがう裁定が下ります。裁定が日によって変わると、ルールではなくその日の交渉になります。
決めたあとに、もうひとつ確かめることがあります。本人の側に「決めた」という記憶が残っているかどうかです。こども家庭庁の令和7年度の調査では、インターネット利用について「ルールを決めている」と答えた割合は、小学生本人が83.8%、その保護者が88.4%でした。差はまだ小さいほうで、中学生では本人74.5%・保護者81.9%、高校生では本人44.3%・保護者58.3%と開いていきます。親が伝えた時点で決まったことになっている家庭が、学年が上がるほど増えるということです。
同じ調査では、小学生の保護者のうち「利用してもよい時間や場所を決めて使わせている」と答えたのは61.9%でした。決めている家庭は多数派です。だからこそ、決めたかどうかより、何をどう決めたかのほうに差が出ます。紙に書いて見える場所に貼り、本人に読み上げてもらうところまでやると、認識のずれはその場で見つかります。
なお、睡眠ガイドも、就寝時刻の先延ばしを防ぐ手立てとして「家庭での電子機器使用に関するルールづくりが有効な場合があります」と書いています。ルールを作ること自体は、生活の側からも支持されている手です。
同じルールでも、守れる日と守れない日があるのはなぜか
合図を本人の手に戻し、やめたあとの予定を置き、守れなかった日の扱いまで先に書いておく。この3行は、終わりの場面でぶつかっている家庭なら、どの子に対しても試す価値のある形です。先に変化が出るのはたいてい長さではなく、終わりの場面でやり取りする言葉の量のほうです。
それでも、同じ3行で落ち着く子と、何週間たっても合図のところで止まれない子がいます。分かれ目は、意志の強さではありません。本人が「何を途中で切られた」と感じているかが違うのです。
画面の向こうに人がいる子にとって、切られているのはゲームではなく、友だちとつながっている時間そのものです。この子に「もう時間だから」と告げると、自分だけが抜ける形になり、翌日の教室での立場まで頭をよぎります。合図を時計ではなく相手との区切りに置き直す――一緒に遊んでいる相手が抜けるところ、全員で「ここまで」と決めたところ――と、守る相手が親から友だちに移ります。約束の相手が変わると、同じ時刻でも守られ方が変わります。
負けている場面や、途中で投げ出した姿を人に見られたくない子は、別の理由で止まれません。この子にとって、親の「もう終わり」で閉じる形は、負けたまま終わらされた記録として残ります。ここでは、始める前に「ここまでやったら終わる」と本人に声に出して宣言してもらう手が届きます。宣言したうえで終われば、終わり方は失点ではなく、自分で決めたことになります。
受け取り方のほかに、もうひとつ動く変数があります。時期です。同じ子でも、外へ向かって踏み出せる時期と、静かに力を溜め直している時期が入れ替わりながら訪れます。溜め直している最中は、合図を整えても、踏みとどまる分の力が手元にありません。ここでルールを次々と作り替えると、作り替えたこと自体が負荷として乗ります。2週続けて同じ形が機能しないときは、形を疑う前に、今が溜め直す側に入っていないかを一度だけ考えてみてください。
この記事のポイント
決める順番は、終わりの合図 → やめたあとの予定 → 長さの数字 → 守れなかった日の扱い。長さの平均は判断の材料にはなりますが、目標にはなりません。そのうえで、この3行が止める力として働くかどうかは、本人が何を切られたと感じるかと、どの時期に当たっているかで変わります。
言い方をもう一段うまくしても、この差は埋まりません。埋まるのは、相手をどう見立てるかを先に決めたときです。ゲームに限らず、勉強や持ち物のことで家庭の中の行動が止まったときに何を動かせるのかは、勉強・スマホなどの行動課題に領域ごとに整理してあります。
よくある質問
小学生はゲームは何時までにするべきですか
就寝時刻から逆算して、寝る1時間前には終える形が目安になります。厚生労働省の睡眠ガイドは小学生に9〜12時間の睡眠を参考として示しているので、起床時刻から逆算すると就寝時刻が決まり、そこから1時間引いた時刻がゲームの終わりになります。同じガイドは「デジタル機器は寝室には持ち込まず、電源を切って、別の部屋に置いておきましょう」とも書いています。終わる時刻を守るより、置き場所を寝室の外にするほうが先に効くことがあります。
子供は休みの日にずっとゲームをしてもいいですか
休日にゲーム以外の予定が1つも入らない日が続いているかどうかで判断します。出かける予定や家の用事が入っている日なら、残り時間が長くてもそれほど心配はいりません。予定が何もない日が続くときは、ゲームを減らす前に、先に別の予定を1つ入れるほうが衝突が少なくなります。睡眠ガイドが、削った余暇を日中に補うよう勧めているのと同じ考え方です。
中学生のゲームは1日何時間が目安ですか
中学校3年生の平日の平均は1時間48分で、小学校6年生とほとんど変わりません。目安の時間を親が決める形は中学で急に通りにくくなるので、小学生のうちに終わりの合図を本人の手に移しておくほうが、移行は楽になります。睡眠の目安は中学・高校生で8〜10時間とされています。
ゲームの時間は学力に影響しますか
公的な調査では、ゲームの時間が長いほど学力調査のスコアが低い傾向が示されています。ただし、これは同時に見られる傾向であって、ゲームが成績を下げたという因果関係を示したものではありません。同じ調査では、家庭の社会経済的な背景や勉強時間など複数の要素が同時に関係していることにも触れられています。数字を根拠に「ゲームのせいで下がる」と伝えると、本人には責められた話として届くので、生活のどこが押しのけられているかを一緒に見るほうが話が進みます。











